「framboiseフランボワーズ」という名前で絵を描いています。
framboise…赤い粒々がまんまるく集まったあの木いちごのことです。
これは私にとって、子どもの頃のワクワクどきどきが全てつまった特別なものなのです。
田舎の祖母の家に遊びに行くたびに、咲き誇っている庭の花や野菜、フルーツ、植物を祖母はゆっくり歩きながら案内してくれました。
家の周りをぐるりと歩くのがほんとうに楽しいひとときでした。
たくさんの立派に実った野菜とともに、春はイチゴそれから梅の実、夏になるとスイカ、桃にブドウ、キウイもなっていました。
秋になると柿、椎茸狩り、裏山で筍ほり、こんにゃく芋が採れたときは、大きい釜で手作りこんにゃくを作ったりもしました。
ほぼ粘土遊びと変わらず、私は星の形だったり、まんまるの形、ドーナツの形などいろいろと楽しみました。
(思い出すとにんまりしてしまいます)
そういう楽しさいっぱいのなかで、いとこ同士で一時期ブームだったのが「探検ごっこ」でした。
歳上のいとこのお姉さんに「山の上の畑まで探検にいくわよ!」と言われ、なぜか水の入った紙コップを手渡されました。
私にはわくわくドキドキの時間でしたが、今思えば探検というより「さんぽ」という感じでした。
道の斜面にはいろいろな草花がいっぱいで、その中に混ざって野生の赤い粒々の木いちご「framboise」があちらこちらに顔を出していました。
そこでお姉さんが言うのです。
「木いちごはそのまま食べちゃだめだよ。必ず割ってね。中にアリさんいるかもしれないから…」って。
言われたように割って確かめて、コップの水で洗って口に入れました。
口に入れて噛んだ瞬間の衝撃!!!甘酸っぱい味となんとも言えない木いちごの香り…あまりの美味しさに感動しました。
アリさんが入っているものもありましたが「こんなに甘いんだもの…アリさんも食べたいよね」と納得したものです。
そうやって木いちごを摘みながらの散歩はほんとうに楽しくて、山の上の畑に行くとイタチがいたりと最後まで驚きの「探検」でした。
野生のうさぎさんが急に庭に入ってきたこともありましたし、カラスが車の屋根でマントのように羽を広げていたりといろんなことに遭遇したものです。
田舎ならではですが、私にとって祖母の家は宝箱のようでした。
それ以来、木いちご「framboise」を見ても食べてもノスタルジックになり、温かい気持ちに包まれるのです。
あの時食べた同じ味にはなかなか出会えませんが、家の冷凍庫には「framboise」が必ず入っています。
絵を描いているときのわくわくする気持ち、ルンルンと楽しくなる気持ちはそのときの気持ちに通じるものがあるのです。
その気持ちを乗せてこれからも絵を描いていきたいと思っています。